NHKの番組改変に関して

色々と過去の資料を漁ったり、経過を追ったり、当事者の意見を見たりした結果、
自分自身の中である程度結論を持ちました。
安倍。中川氏の発言は内容がどうであれ、政治的介入であったのだろうと思います。
もちろん、これは私の考えであり、様々な意見はありますが。


まず、安倍氏はNHKが来た際に番組について説明を受けています。
その説明後に、安倍氏に言によると、「公平・公正にお願いします」と言ったそうです。
(朝日はもっと強い口調で言ったと報道していますが)
これは一般論で言ったのであり、これを圧力と受け止めたNHKが悪いという意見があります。
しかし、安倍・中川氏の政治的立場は誰もが知ってるわけで、その状況下では
この発言は圧力と感じると思います。
中川氏に関しては発言が二転三転しており、ハッキリとはわからないのですが、
中川氏が当初言っていたように1月29日に会って、言ったのであれば、アウト。
そうではなくて、最近のコメントにあるように放送後の2月2日であれば、
セーフだとは思います。(それでも、密室で言ったのならば微妙なことでありますが)


しかし、正直この2人以上に罪が重いのはNHKであると思います。
まず、政治家に安易に会いに行ったということです。
NHKの宮下理事や関根放送総局長は以下のように述べています。

NHKの番組改変をめぐる問題で、NHKの宮下宣裕理事は19日の記者会見の中で、放送前に安倍晋三衆院議員に番組内容を説明した理由について、「『日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会』の幹部だったため」と明らかにした。

 安倍氏中川昭一衆院議員の2人に番組内容を説明した理由については、「両氏が『若手議員の会』の幹部であり、会の中でこの番組について議論があることを(国会担当局長が)知っていたため」と話した。

 また、関根昭義放送総局長は、番組内容を政治家に事前説明することについて、「放送法上、NHK予算は国会の承認を得なくてはならず、議員に事業計画や個別の番組について正確に理解してもらう必要がある」と話し、「当然」の対応との認識を示した。

NHKはどこを向いているのでしょうか?国民でしょうか?政治家でしょうか?
報道前に番組内容を説明すると言うのは、TBSの坂本弁護士のビデオを見せた件と
どう違うのかさっぱりわかりません。報道の自殺行為です。
さらに、NHKの今回の問題が起きた後の対応の早さにも、驚きがあります。
NHKは長井プロデューサーのがコンプライアンス委員会にした告発を受けてから
1ヶ月何も行っていなかったようです。
それにも関わらず、今回の問題が発生してからのNHKの対応は早く、
コンプライアンス委員会の審議の遅さと比べて、異例の早さだと思います。
さらに、NHKのコンプライアンス委員会は以下のように結論を出したそうです。

NHKはこの日の会見で、番組の担当デスクだった長井暁チーフプロデューサーが局内のコンプライアンス(法令順守)通報制度に基づいて内部告発した件について、「放送法3条およびNHK倫理・行動憲章に違反する不法行為は認められない」との調査結果を公表した。

長井氏へのヒアリングも行わずに結論を出してしまうというのはどうなんでしょうか。
委員会が正常に機能しているのか疑問です。


NHKの問題はこれだけではありません。制作会社に対する仕打ちでも、どうかと考える所があります。
孫受け会社であり、実質上の制作をしていたドキュメンタリージャパン(以下 DJ)に対して、
様々な責任を押し付けてはいると思います。
DJは1月19日からの度重なる改変指示に、耐え切れなくなりNHKに制作を
最終的には預け、当時第3話担当であった坂上香さんによるとDJは
番組からDJのクレジットもはずして欲しいと訴えたそうです。
にもかかわらず、DJのクレジットは残されたまま改変した番組を放映したと。
その後、法廷の主宰団体の1つであるバウネットは裁判をはじめるわけですが、
責任を取らされたのはDJのみでNHKや下請けのNHKエンタープライズ21は
全く責任をとらされていません。
TV番組の制作は放送事業者と制作会社一体で作られているのは当たり前であり、
これでは制作会社は、何も出来なくなってしまいます。
この件については制作会社の連合組織であるATPが同様の声明を出しています。
http://www.atp.or.jp/news/20041215.html



以上が、今回の問題の本質的と思える部分について考える所ですが、
その他に派生した事項についても、記していこうと思います。


今回の朝日の報道は少々弱いと考えます。
仮に、朝日の報道が真実だとします。
しかし、権力は必ずと言っていいほど言い逃れをします。それは当たり前のことでしょう。
その準備が万全であったのか、朝日の報道を見る限り、そうではなかったとの思いがあります。
北海道新聞社の裏金追及に於いては、様々な事態を想定して、万全の体制で望んだそうです。
(ちなみに、裏金追及に携わった方のブログがあります。
こちら→http://newsnews.exblog.jp/
これからの挽回によって、朝日の信用度、ひいては報道の信用度が決まるようなきがします)


次に、女性戦犯国際法廷について考える所です。
正直、この国際法廷の日本側代表の1人である故・松井やよりさんが好きではありません。
ゆえに、この法廷に対してかなり懐疑的に見ていました。
しかし、安倍氏は様々な所で言うほどのヒドイ内容であったのかについても疑問が残ります。
例えば、弁護人がいなかったとの話しですが、これは正確ではありません。
バウネットは以下のように安倍氏の発言に対し抗議をしています。
(この抗議が報道されていないのは、安倍氏の発言に対しての反論を
黙殺しているという点でメディアは問題があると考えます)
http://www1.jca.apc.org/vaww-net-japan/nhk/appeal050117.html
バウネットの声明が100%事実と言うつもりはありません。
しかし、今日、何人かの教授の方にお話を聞いた限りだと、
それほどヒドイ法廷ではなかったのではないかという印象を持っています。
そもそも、安倍氏はこの国際法廷にしてもそうですし、番組についても
全く見ていない、調べていないのではないかと考えます。
もし、そうであるならば、反論は調べてから行うのが筋でないかと考えるのです。

以上が、NHKの今回の問題について考える所です。