封印作品の謎 2 安藤健二著

作者自身が後書きで書いてあるように、前作「封印作品の謎」は
差別表現や社会的な問題から封印された作品を取り上げていた。
今回の著書で取り上げられた作品は、ある意味前作で取り上げた
作品以上に問題は根深く、封印されたままになってしまう
可能性が高い作品が多い。


本作にある「ジャングル黒べえ」は前作で取り上げた作品同様、
差別表現を理由とした封印作品であり、
根拠の無い、自主規制が働いた結果であるようだ。
そういう意味では、封印作品ではなくなる可能性も
あると私は考えている。
(作者が亡くなってしまっている現在、藤子プロが簡単に
認める可能性は低いだろうが)


しかし、本作に収録されている4編中、他の3編は
著作権の問題、感情的な問題が複雑に絡み合っており、
封印作品でなくなることは、絶望的に思えてくる。


特に、「感情的な問題」というのが厄介なのだと思う。
本著で封印に至るまでのいきさつと関係者のインタビューを読むと、
キャンディ・キャンディ」は、原作者・漫画家が仲が良かった分、
封印作品からの解除は相当困難な状況に思える。
オバQ」は著者は不確定な情報であるとして、詳しい記述を
避けていたが、安孫子氏・藤本氏の間には亀裂は無かったものの、
両氏に関わる第三者間の亀裂が深刻である事を伺わせる。
そして、両氏が「オバQは無理」と言っていた事も
封印作品解除が絶望的であることを感じさせる。
「サンダーマスク」も、当時の制作者と代理店の間の
力関係による、強引な手法から簡単には復活しないだろう。


時が解決するという手も大人の世界ではあるかもしれないが、
「ビジネス」という金銭問題が絡んでいる分、
なかなかこれも難しいだろう。
それに当時の状況を知る人間が亡くなってしまえば、
それも不可能になる。


人間は合理的な考えだけで動けるわけではないということが
この本を読んで伝わってくる。


また、本作は最後の「サンダーマスク」の章で放送の進化と
著作権の難しさについて簡単ではあるが触れられている。
「放送と通信の融合」という問題にも絡んでくる事でもある。
著作権の重要性は非常に分かるのだが、「衛星放送」
「通信」が契約書に明文化されてないだけで、
放送できなくなるという事態は、今後の事を考えさせられる。


本書は様々な問題を考えさせてくれる。
前作も優れたものだったが、今作も同等、
もしくはそれ以上の評価が出来ると考えている。